🍂 少しずつ、ずれていったもの⑪|不登園と、あの日の落とし物

娘が、
幼稚園へ行けなくなっていった頃のことです。

朝、家を出ても、
なかなか園の中に入ることができず、

門の前まで行っては止まり、
また戻って、

それを何度も繰り返していました。

やっと門のところまで来ても、

どうしても、
そこから先へ進むことができませんでした。

そんなある日、

門のところに担任の先生がいらっしゃって、

ここちゃんの様子を見ると、
そのまま強く抱き上げました。

そして、

「大丈夫だから」

そう言って、
私に帰るよう促されました。

私は、

泣きながら抵抗するここちゃんを、
そのまま置いて帰りました。

そのとき、

「お母さん、すぐ戻るから」

という言葉が、
耳に入りました。

でも、

私は戻ることができませんでした。

あの時の娘は、
きっと全部分かっていたのだと思います。

かなり敏感な子でした。

だからこそ、

あの時間は、
私の中にずっと残りました。

あの日、
家に戻ってからも、

気持ちが沈んだままでした。

あれは、
娘を安心させる言葉ではなく、

結果として、
嘘になってしまったからです。

翌日から、

登園前になると、
微熱が出るようになりました。

そして、

どうしても行くことができなくなってしまいました。

不登園の始まりでした。

あの時のことを思い返すと、

あれは、

私がどこかに置いてきてしまった、
ひとつの落とし物だったように感じます。

本当は、

もうしんどくなっていることに、
気づいていたのに。

それでも、

どこかで決めきれないまま、
その時間を続けてしまったこと。

あの出来事は、

私の中で、
大きな反省として残りました。

そして、

もう二度と、
同じような思いはさせまいと、

その後の選び方を考える、
ひとつのきっかけにもなっていきました。

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