
娘が、
幼稚園へ行けなくなっていった頃のことです。
朝、家を出ても、
なかなか園の中に入ることができず、
門の前まで行っては止まり、
また戻って、
それを何度も繰り返していました。
やっと門のところまで来ても、
どうしても、
そこから先へ進むことができませんでした。
そんなある日、
門のところに担任の先生がいらっしゃって、
ここちゃんの様子を見ると、
そのまま強く抱き上げました。
そして、
「大丈夫だから」
そう言って、
私に帰るよう促されました。
私は、
泣きながら抵抗するここちゃんを、
そのまま置いて帰りました。
そのとき、
「お母さん、すぐ戻るから」
という言葉が、
耳に入りました。
でも、
私は戻ることができませんでした。
あの時の娘は、
きっと全部分かっていたのだと思います。
かなり敏感な子でした。
だからこそ、
あの時間は、
私の中にずっと残りました。
あの日、
家に戻ってからも、
気持ちが沈んだままでした。
あれは、
娘を安心させる言葉ではなく、
結果として、
嘘になってしまったからです。
翌日から、
登園前になると、
微熱が出るようになりました。
そして、
どうしても行くことができなくなってしまいました。
不登園の始まりでした。
あの時のことを思い返すと、
あれは、
私がどこかに置いてきてしまった、
ひとつの落とし物だったように感じます。
本当は、
もうしんどくなっていることに、
気づいていたのに。
それでも、
どこかで決めきれないまま、
その時間を続けてしまったこと。
あの出来事は、
私の中で、
大きな反省として残りました。
そして、
もう二度と、
同じような思いはさせまいと、
その後の選び方を考える、
ひとつのきっかけにもなっていきました。
