
(森美術館/2026年5月)
今回の東京旅で、
娘が「どうしても見たい」と言っていたのが、
六本木ヒルズ・森美術館で開催されていた『ロン・ミュエク展』でした。
「ロン・ミュエク展へ行った時の記録です。」
私はこの時まで、
ロン・ミュエクという作家を知りませんでした。
最初は、
同時開催されていたサンリオ展が目的かと思っていたくらいです。
けれど実際に行ってみると、
どちらも長蛇の列。
「ああ、有名な展示なんだな」
と、その時点で少し圧倒されていました。

オーストラリア出身で、
現在はイギリスを拠点に活動している現代美術作家・ロン・ミュエク。
人間を驚くほどリアルに再現した彫刻で知られ、
実物よりも極端に大きかったり小さかったりするスケール感も特徴です。
作品はまるで本物の人間のような存在感があるのに、
どこか現実ではない不思議さがあります。
今回の展示は、
パリ・ミラノ・ソウルを巡回してきたもので、
日本では六本木ヒルズ・森美術館で開催されていました。
初期作品から最新作までが並び、
制作風景を記録した映像や写真も展示されていました。
《In Bed》——最初から引き込まれた女性像
展示に入って最初の方にあったのが、《In Bed》という作品でした。
初期の頃の作品らしいのですが、全長が6.5メートルもあるそうです。
ベッドに横たわる女性。
ただそれだけの構図です。
近づくと、肌や髪、指先まで細かく作られていて、どこを見ても見入ってしまいます。
角度を変えるたびに印象が変わり、どの方向から見ても不思議な存在感があります。
リアルなのに、どこか現実から少し離れたような感覚に、私は自然と引き込まれていきました。


エンジェル・・・疲れたおじさんのような天使
これも印象に残った作品のひとつです。
天使なのに、
顔はどこか疲れたおじさんのようで。
羽を広げているのに、
いわゆる“神々しさ”はあまりありません。
何かをずっと考え込んでいるような表情で、
「何を考えているんだろう」
と、自然に気になってしまいました。
娘はしゃがみ込んで、
じっくり見ていました。
見る角度によっては、
少し「おっと…💦」となる感じもあり、
そこも含めて妙に印象に残っています。

胸元に赤ちゃんとスーパー袋の女性像
この作品も、
私の中では特に印象に残っています。
最初に目を引いたのは、
この女性の表情でした。
無表情なのに、
どこか疲れているようにも見えて。
よく見ると、
胸元には小さな赤ちゃんがいて、
両手にはスーパー袋のようなものを持っています。
普通、
赤ちゃんを抱いている人を見ると、
「幸せ」や「温かさ」を想像します。
でもこの作品からは、
そういうわかりやすい感情があまり伝わってきません。
だからこそ、
妙に気になりました。
そして私は、
この作品を見ながら、
娘が小さかった頃のことを思い出しました。
あの頃、
私はいつも疲れていて、
毎日を回すことに必死でした。
もしかしたら、
私もこんな表情をしていたのかもしれない。
そんなことを、
ふと思いました。

古い船に座る男性——細部に見入ってしまう作品
これは、
娘が特に気に入っていた作品でした。
古い船に、
ひとりで座る男性。
少し離れて見るのと、
近づいて見るのとで、
印象がかなり変わります。
肌や耳、
船の傷や木の質感まで細かく作り込まれていて、
気づけばじっと見入っていました。


写真をズームして、また見えてくるもの
ちなみにこれは、何かわかりますか?

近づいて撮ったのではなく、
作品をズームした写真です。
家に帰ってから写真を拡大して見返してみると、
ヒゲや肌の質感まで驚くほど細かく作り込まれていて、
娘と二人で
「ここまで作ってるの…?」
と、何度も見入ってしまいました。
展示を見ている時は、
作品全体の大きさや空気に引き込まれるのですが、
あとから写真を見返すと、
また違う発見があります。
展示を見て終わりではなく、
帰ってからもう一度楽しめる。
そんなところも、
ロン・ミュエク展の面白さだった気がします。

制作風景を見ることができる展示
展示の途中には、ロン・ミュエクの制作風景を写したパネルも展示されていました。
作品だけを見るのではなく、どうやって生み出されているのか、その途中の空気まで見えるような展示です。
作業部屋には、制作途中の顔や人形のようなものが並び、少し不思議で、どこか静かな緊張感があります。
でも、こういう風景を見ることで、「あの息遣いのようなリアルさ」がどうやって作られているのか、伝わってくる気がしました。

最後に見た「頭蓋骨の山」——静かな死のモチーフ
そして最後に展示されていたのが、
大量に積み上げられた頭蓋骨の作品でした。
調べてみると、
100体もの頭蓋骨で構成されているそうです。
大きな空間いっぱいに広がっていて、
その間を歩いて見ていく形になっていました。
実は、
娘が「どうしても見たい」と言っていたのは、
この作品だったのです。
最初に聞いた時は
「頭蓋骨?」
と少し驚いたのですが、
実際に見てみると、
不思議と怖さは感じませんでした。
白い頭蓋骨が積み上がる空間を歩いていると、
現実のようでもあり、
現実ではないようでもあり、
不思議な感覚になります。

余韻
リアルなのに、
どこか現実ではない。
静かなのに、
強い息遣いを感じる。
ロン・ミュエクの作品には、
そんな不思議な存在感がありました。
本当は、
まだ書ききれていない作品もいくつもあります。
写真では伝わりきらない空気も多かったので、
もし興味のある方は、
ぜひ実際に足を運んでみてください😊

ちなみに、《Dark Place》は、
あまりにも長蛇の列で、
フライトの時間もあり、
今回は諦めることになりました。
遠くから少しだけ見えた《Dark Place》は、
暗闇の中に浮かぶ顔がとても印象的で。
ほんの一瞬しか見られなかったのが残念でした。
そういえば、
青森・十和田市現代美術館にも、
ロン・ミュエクの常設作品があるそうです。
今回展示を見て、
「いつか実際に見てみたいな」と思いました🌿

