🍃 流れていったクロックスのこと|あの日のパニック

今日、
娘(ここちゃん)と一緒に、
九州の旅の動画を見ていました。

そこから、
ふと昔の話になって。


大分の道の駅だったと思います。

子どもたちが水遊びできるような、
小さな池のような場所があって、

そこで遊ばせることになりました。


そのとき、
ここちゃんはクロックスを履いていて、

足から外れたそれが、
水の上をぷかぷかと浮いていました。

それを、
面白そうに眺めていたのです。


黄色いクロックスが、
ゆっくり水に流されながら、
くるくると向きを変えていく。

そんな様子を、
しばらく楽しそうに見ていました。


でも、

気がつくと、
そのまま少しずつ流れていって、

排水のほうへ近づいていったのです。

そして、

「あっ」

と思った瞬間には、

そのまま排水溝の中へ、
すっと入っていってしまいました。


一度中へ入ってしまうと、
もう見えません。

どこへ行ったのかも分からない。

その瞬間、

ここちゃんは、
全てを失ったような大きなパニックになりました。


私たちも、
大慌てでした。

流れていく先はどこなのか。

主人と一緒に、
その先をたどるように走っていって、

「このままだと川のほうへ行くかもしれない」

そんな話をしながら、
先回りするように探していました。


すると、

網目の隙間から、
ほんの少しだけ、

黄色いクロックスが、
水に流されていくのが見えたのです。

主人が、
その流れてくるタイミングを見ながら、

重たいふたを持ち上げて、

なんとか、
クロックスをすくい上げました。


その間、

ここちゃんは、
ずっとパニックでした。

そして気がつくと、

周りにいた小さな子どもたちまで、
固まったようにこちらを見ていました。


その頃のここちゃんは、
もう小学三年生くらいだったと思います。

周囲から見たら、
かなり切迫した状況に見えていたのだと思います。

その空気に、
私も途中ではっとしました。


きっと普通なら、

「仕方ないね」

で済むことなのだと思います。

クロックスなんて、
どこにでも売っています。

また買えばいい。

それだけのことなのだと思います。


でも、

あの頃の娘にとっては、

あのクロックスには、
代わりがありませんでした。

世界で、
たった一足しかないもの。


もしあのまま、
戻ってこなかったら。

きっと、
その後の旅行も、
落ち着いて続けることは難しかったと思います。

それくらい、
当時の娘にとっては、
大きな出来事でした。


そして、

クロックスが戻ってきた時、

主人と二人で、
「よかった……!」

と、
思わず声が出るくらい、
ほっとしたのを覚えています。


あの頃は、

こういう大きなパニックがあるたびに、

「この子は、
これからどう成長していくのだろう」

そんな不安も、
どこかにありました。


でも今になると、

「そんなこともあったね」

と、
娘本人と話せるようになっています。

娘も、
節目節目の大きなパニックは、
今でもよく覚えているのです。

理由なんて、
今でもよく分からない。

でも、

それも含めて、

今では、
少し色の濃い思い出のひとつです。

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