⭐️成人式の前撮りの日

前日の夜。

お風呂で、ちょっとした言い合いになった。

私たちは、今でも時々、一緒にお風呂に入る。
娘と私をつなぐ、小さな共有の時間。

前撮りのあと、そのまま着物で帰れるので、
どこかで写真を撮ろうと娘は考えていた。

私「○○神社で撮るのはどう?」
娘「でもそこ、友だちがもう撮ってるからイヤなんよ!」

私「じゃあここはどうだろう」
娘「そこも、もう友達が撮った場所!」

それから、娘は思いもつかないところを言ってきた。

確かに、娘が小さい頃に行ったことがある場所だけど、
もう今は、人も入らない雑木林のような場所。

私もついムキになってしまった。

「そこはちょっと・・・汚したらどうするのよ」

そう言った瞬間、ここちゃんの顔がすっとそっぽを向いた。

ほんの少しのことなのに、空気が離れる。

最近は“映え”のことを気にしているように見える。
でも、ちょっと言いすぎたかな・・・と、あとになって思う。

お風呂上がり、それぞれの部屋へ。

しばらく、沈黙。

でもやっぱり気になって、
スマホを片手にここちゃんの部屋へ行った。

「ねえ、さっきの場所のことなんだけど……」

そう言いかけた時、ここちゃんも同時に顔を上げて言った。

「ねえ、私もいいとこ見つけた!」

「せーの!」

で言った場所は、まったく同じだった。

顔を見合わせて、笑ってしまった。

──そして翌朝。

一緒に選んだ髪飾りを手に、スタジオへ向かう。

受付で、ここちゃんは自分からペンを取って、
ささっと記入を始めた。

その手つきを見た時、
なんか、ググッときて。

名前を呼ばれると、「はい」と小さく、でもはっきり応える。

その声の奥に、
幼いころの「かあちゃん〜」が、かすかに重なった。

少しずつ、手が離れていく。

でも、その温もりは、ちゃんと残っている。

カメラの光の中で笑うここちゃんを、
私は少し離れたところから、思い浮かべていた。

ふと浮かんだのは、昨夜のあの声だった。

「せーの」

きっと、こうやって少しずつ離れていくんだろうなあ。

少し寂しい気もするけれど、

あの声と一緒に、
今日のこの笑顔を、覚えておこう。

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