🚕ビートルがいないと帰れない日

こだわりとパニックに寄り添った日々のこと

この頃の私は、娘の特性をまだよく理解できていなくて、
毎日が“手探り”でした。
今ではすべてが懐かしい思い出だけれど、
当時は本当に、ひとつひとつが小さな挑戦のようでした。

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このお話は、娘が２歳頃のこと。
よく自転車の後ろに乗せて走っていた、あの頃の記憶です。

🎈 赤いボールのある道じゃなきゃ、ダメだった

まだ小さかった娘が、なぜかとても気に入っていたのが
近所のお宅の庭に置かれていた赤いボールでした。

それを見てからというもの、
「ボー！　ボー！」と言っては、自分から道を指定するように。

でもある日、そのボールが見当たらなくなっていて――
”ボールが見つからないと帰れない！” と大泣きのパニックに。

私たちはその日、別のボールを探して何周もドライブ。
まるで“探索の旅”のような帰り道になりました。

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🚕 ビートルを見ないと、家に帰れない

別の日には、よく通るアパートの前に停まっていた
黄色いフォルクスワーゲン・ビートル。

それがないだけで、またパニックに。

「どこかでビートルとすれ違わないと、家に帰れない」
――そんなふうに、気持ちを切り替える“きっかけ”が
娘には必要だったのです。

だから私たちは、今日もまたドライブ。
目的地もなく、ただただビートルを探して走る日々でした。

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🧠 「なぜボール？」に、理由は見つからないけれど

正直、**「なぜそこまでボールにこだわったのか」**は、今でもはっきりとはわかりません。

考えても、考えても、
これだ！という理由には、結びつかないのです。

でも、きっとこれは――
特性のある子どもの“こだわり”には、
理由が見えにくいこともある、ということなのだと思います。

とはいえ、娘の場合は、
とにかくボールが大好きだった。

少し大きくなってからも「ボールがほしい」とよく言っていて、
家の中にもいろんなボールが転がっていました。

あの赤いボールも、そんな“好き”の一部。
そして、それが“いつも同じ場所にある”という安心感が
娘にとって大切だったのかもしれません。

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🌀  気持ちの切り替えが苦手な子どもを前にして感じたこと

特に大変だったのは、
一度気持ちが崩れてしまうと、立て直すまでにとても時間がかかったことです。

おんぶしても、抱っこしても、泣き止まない。
家の中を歩き回っても、気持ちの切り替えには至らない。

結局、おんぶしたまま外に出て散歩したり、
自転車の後ろに乗せて、ぐるぐると何周も走る。
それでも落ち着かないときは、車に乗せてドライブでした。

「これだけ運転したんだから、そろそろ寝るかな？！」
――そう思っても、寝ないのなんの・・・。
むしろ、泣きやんでからもずっと起きている。

気持ちの切り替えにかかる時間が、
ただただ、長すぎたんです。

それが当時の現実であり、
「気持ちの切り替えが難しい」ということの意味を、
私はその頃、身をもって感じていました。

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🌿 私の“道の選び方”と、自然な対応

あの頃の私は、少し怖かったのです。

「この道じゃないとダメ」
「ビートルがいないと帰れない」

――そんな“決まりごと”のようなこだわりが、どんどん増えていくのが怖かった。
もしこれがもっと増えたら、私たちの世界がどんどん狭くなってしまうのではないか。
そんな不安を抱えていました。

だから、私はいつの間にか
いろんな道をあえて選ぶようになっていきました。

今日はこの道、明日はあの道。
少し遠回りになっても、新しいコースを選んでみる。

「同じ道でなくても大丈夫」
――そう思えるようにすることで、娘のこだわりに小さな“防衛線”を張っていたのだと思います。

どうにかして、この子の世界を少しでも柔らかく広げたい。
ただ、それだけを願っていたように思います。

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📍 記憶力の追いかけっこ

でも娘は、どんな道を通ったかをちゃんと覚えている子でした。

「あっちの角にあの花があった」
「こっちの道を通ればあの道につながる」

――小さな記憶が、どんどん積み重なっていくのです。

娘が記憶を重ねていくスピードに、
私は毎日、まるで追いかけっこしているような気分でした。

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🌼 こだわりは、ずっと続くものじゃない

あの頃の私は、
「この先もずっとこうなのかもしれない」と、
重たい気持ちを抱えていました。

しかし、あんなに大騒ぎしていたボールも、ビートルも、
成長した今の娘に話すと――

「へぇ〜？そんなのあったっけ？」
……と、笑いながら全く覚えていないのです。

あんなに手がかかった日々も、
いつの間にか、自然と終わりが来ていた。
子どもも親も、少しずつ前に進んでいくんですね。

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🚘 今は、“笑ってリフレッシュするドライブ”に

今でも、私たち親子の中で“ドライブ”は特別な時間です。
あの頃のように泣いていた時もあったけれど、
きっとずっと――どこかでつながっている時間なのだと思います。

娘は今でも、少しモヤモヤすることがあったり、
何かに行き詰まったときに、
「ドライブしたい！」と私を誘ってきます。

車に乗ると、彼女はたくさん話します。
「今日ね、こんなことがあってね〜」
そんなふうに、まるで毒を吐き出すように、
胸の中のモヤモヤを、たくさん話してくれます。

それで何かが解決するわけじゃないけれど、
話し終える頃には、少し顔がすっきりしていて――
また前を向いて歩き出せる。

娘にとって、それが**“リフレッシュ”**なんです。
つまり、幼い頃の“クールダウン”が
形を変えて今も続いているのだと思います。

だから私は、どんなに忙しくても、
そういうときはできる限り付き合うようにしています✌️

かつて“帰れないドライブ”だった時間が、
今では**“前に進むためのドライブ”**に。
それは、娘にとっても私にとっても、
何よりも大切な、心の通い合う時間になっています。

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🌸 今、向き合っているあなたへ

こだわりが強くて、うまくいかない日が続いている方へ。
今まさに、あの頃の私のような気持ちで、
戸惑っている方へ。

その時間は、決して無駄にはなりません。

いま、もし解決の糸口が見つからないとしても、
“寄り添ってあげようとしている”あなたの時間は、
きっといつか、優しい思い出に変わります。

どうか、あなたのペースで。
子どもと過ごすその日その日が、
大切な時間になりますように。

🌱
あの頃の娘には、「道」だけでなく、いろんなことに、
乗り越えるまでに時間がかかった時期がありました。

今後も、少しずつ娘のエピソードを振り返りながら、
同じように悩んだ日々や、寄り添いながら過ごした時間を
少しずつ綴っていきたいと思います。