
1970年・昭和の大阪万博——熱気と希望に包まれて
1970年に開催された大阪万博は、日本中がわくわくと胸を躍らせた、大きなイベントでした。
テーマは「人類の進歩と調和」。
会場には、岡本太郎さんによる「太陽の塔」が建てられ、世界77カ国と4つの国際機関が参加。116もの展示館が並び、まるで夢の国のようだったそうです。
アメリカ館では本物の「月の石」が展示され、宇宙やロボットの最新技術を間近に見られるとあって、連日長い列ができるほどの人気ぶり。
来場者数は、なんと約6400万人。当時の日本の人口の6割にものぼる人たちが訪れました。
モノレール、動く歩道、テレビ電話、缶コーヒー…。
今では当たり前になったいろいろなものが、ここから生まれた時代。
高度経済成長まっただ中、日本全体が「明るい未来」を信じて進んでいた、そんな熱気に満ちていました。
2025年・現代の大阪万博——落ち着いた社会が迎える万博
そして2025年。
再び大阪で万博が開催されることになりました。
ただ、1970年のときのような「国中が熱くなる」という雰囲気とは、少し違った空気感があるように感じます。
それは、決して「盛り上がっていない」というわけではなく、今の時代がとても変わったからなのだと思います。
今では、インターネットやスマホを通して、世界中の最新技術や情報にすぐアクセスできる時代。
かつて万博でしか見られなかったようなものが、今は日常の中にあるからこそ、「すごい!」という驚きも自然と少し控えめになるのかもしれません。
また、社会全体が成熟し、多様な価値観が広がる中で、ひとつのイベントにみんなが同じように熱狂すること自体が、少し珍しくなったようにも思います。
万博の意味も、時代とともに変わる
1970年の大阪万博が「未来への夢と希望」を強く象徴していたとしたら、
2025年の大阪万博は、「今、世界が抱える課題をみんなで考え、次の未来をつくる」ための場になっているように感じます。
持続可能な社会、健康への意識、共生、多様性…。
現代だからこそ向き合うテーマを、世界中から知恵と力を集めて、一緒に考えていく。
そんな役割を、今の万博は担っているのかもしれません。
たしかに、昭和のころのような「わかりやすい高揚感」は少ないかもしれません。
でも、**「静かだけれど確かに前に進んでいる」**そんな実感を得られる場になる気がしています。
それもまた、「進歩と調和」のひとつのかたち。
1970年とは違う形で、私たちは今も未来へ向かって歩いているのだと思います。